大判例

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札幌地方裁判所 昭和36年(レ)64号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一 ところで民事訴訟法第一四七条によると口頭弁論の方式に関する規定が遵守されたかどうかについては当該調書によつてしか証明することができないとされているのであつて、この規定は訴訟手続を明確にする一方その安定性を確保することをねらいとして証拠方法を制限しているものであるが、和解調書も口頭弁論調書と同様、手続を明確にするものであり且つその手続の安定性が要求される上、裁判所書記官が作成し、これに裁判官が署名捺印してこれを認証するものであるから、この規定は和解調書にも準用されると解すべきである。とすると当事者の出頭の有無のような形式的な手続に関する事項はその調書によつてのみ証明すべきであり、他の証拠方法によることができないのであるから、前記のように本件和解調書に申立人公団の代理人として工藤が出頭した旨記載されている以上、手続的な面では同人は右期日に出頭したものとみる外ない。

しかしながら、かように証拠方法が制限されるのは右に説明したようにあくまでも当事者として誰が出頭したかという手続的な方式の点にとどまるのであるから、和解という合意があつたかどうか、あつたとすれば誰によつてなされたかという実質的な面の問題はこれとは別個のものであつて、この点に関する証拠方法には前記のような制限がなく、本件和解調書に公団の代理人として工藤が出頭して和解した旨記載されていても、工藤が和解の合意をしたかどうかを和解調書以外の証拠方法によつて証明することが許され、その際立証すべき事項が本件和解期日における工藤の出頭の有無にわたることも止むを得ないものと解する。

二 ところで和解が確定判決と同一の効力をもつのは、あくまでも合意の内容を正確に調書に記載したときであるが、その効力はあくまでも和解条項で定められた事項についてのみ生ずるのであつてそれ以外には及ばない。そしてこの条項は普通は和解の結論的部分のみを表わすものであつて和解の対象となつた権利義務関係の発生原因を表していない。しかしながらこの発生原因が明確でない以上、特に金銭の支払を求める請求等については充分特定されえないことになるからたとえ和解の効力が和解条項に表示された事項についてのみ生ずるといつても、その効力の及ぶ範囲を確定する際には和解の原因を切り離して考えることはできないのである。和解の原因を調書に記載するのはこのような意味をもつものであるが、一方和解調書には必らずしもこの原因の記載を要するものではなく、これは法律上の必要的記載事項ではない。従つてその記載のない場合には、申立書の内容或いはその他訴訟記録に表われた資料によつてこれを確定することができるのである。又、一旦これが調書に記載された上は、この記載が和解原因を考える上での一番の根拠になることはいうまでもないけれども、これが唯一の資料という訳でもないから、この場合にもこれ以外の他の資料によつてこれを明らかにすることも許されるというべく、もし調書のこの点に誤つた記載があれば記録中の他の資料を参考に、爾後所定の手続で正確な記載に訂正することも可能である。(石井敬二郎 立原彦昭 宮本増)

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